艶笑小噺集



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寄り合い酒

八五郎「おおい、みんな集まったかい。」
若い衆壱「なんだい、あにぃ、大急ぎでみんな集まれってぇから、みんなでやってきましたけど。」
八五郎「実はな、俺の田舎からな、酒を送って来たんだ、これはな酒の元みてぇないーい酒だ、この酒が三升とな、なにもないが、豆腐の鍋だ、これでみんなで一杯やろうってんだ、どうだい、仕事がある、都合が悪いってぇやつはいるかい。」
若い衆弐「何言ってんだい、あにき、俺たちはなぁ、好きだもの、仕事があったって、酒とくりゃあ腰が落ちついちゃうよ。」
八五郎「ま、そうだろうな、みんな集まってんだろうな、吉公に金公に徳に留っと、熊がいねぇな。」
若い衆参「あにぃ、熊のあにぃは新婚で嫁ぇもらったばっかりだから、引っ張り出すの、悪いよ。」
八五郎「そりゃそうだけどもよ、一応声だけはかけてやらねぇと、後でいやみぃ言われてもつまんねぇや、いいよ、俺が手紙書くから。」
若い衆四「手紙書くって、あにき、字知ってるの、それに熊のあにぃだって、字ぃ読めないよ。」
八五郎「なにも、字を書くばかりが手紙じゃねぇや、な、こうして、酒の瓶を書いてな、真ん中に鍋を書いて、その鍋の回りをみんなが笑ってる顔を書けば、これから、みんなで鍋を囲んで、いっぺぇやろうってのが分かるだろ、おう、誰かこの手紙、熊んところへ届けてくんな。」
若い衆壱「熊あにぃ、いるかい、八あにぃんことから、手紙持ってきたよ。」
熊五郎「よせやい、手紙持ってきたったって、俺は字ぃ読めねぇぞ、なに、見りゃ分かる、どれ、ふんふん、酒の瓶があって、みんなが鍋を囲んで笑ってる絵か、ははぁ、これからなんだな、みんなで酒飲もうってぇのか、よし、分かった、今、俺も手紙書くから、ほら、これ持って、八あにぃに渡してくんな。」
若い衆壱「あにぃ、行ってきたよ、熊あにぃからの手紙。」
八五郎「おいよ、これは、へへへへへ、ええ、いい絵だねぇ、男と女が裸で抱き合ってるよ、こりゃなんだな、やつは新婚で嫁さんもらったばっかりだから、こっちの方が忙しくて行かれねぇってぇ、断りの手紙だ、じゃ熊公は来られないみたいだから、みんなで始めようじゃあねぇか。」
熊五郎「あにぃ、待たせたな。」
若い衆弐「あれ、あにき、熊あにぃ、来たよ。」
八五郎「なんでぇ、熊公、お前、来られないんじゃねぇのかい。」
熊五郎「なにいってんだよ、あにき、手紙見てくれたのかよ。」
八五郎「うん、見たよ、これだろ、男と女が裸で抱き合って、こりゃなんだろ、お前は新婚で嫁さんもらったばっかりだから、こっちの方が忙しくて行かれねぇってぇ、断りの手紙じゃあねぇのか。」
熊五郎「なにいってんだよ、あにき、男と女が裸で抱き合ってんじゃあねぇか、すぐに、行く行く、ってんだ。」


熊公の顔

おかみさん「どうしたんだい、お前さん、表からそんな情けない顔して帰ってきて。」
八五郎「ああ、おっかあ、実は今みんなで話をしていたんだけど、そしたらみんな、自分のかみさんのあすこを見た事があるてんだ、俺は見た事がねぇってんで、みんなに馬鹿にされてきたところなんだ、お前すまないけど、お前のあすこを見せてくんねぇか。」
おかみさん「いやだよ、この人は、いきなり何を言い出すんだよ、まあ、お前さんが、馬鹿にされた、そりゃ、夫婦なんだから、見せない事はないけど、あたしだつてきまりが悪いわね、じゃ、こうしましょ、あたしが水のはったタライをまたぐから、お前さん、たらいをのぞいて、水に写ったところをごらんよ。」
八五郎「そうしてもらうと、ありがてぇ。」
なんてんで、夫婦が話をしておりますのを、隣に住んでいた熊公が聞き付けまして。
熊公「なんだって、タライをまたいで、そこに写ったおかみさんのあすこを見るだって、じゃ、おれもついでに見ちゃお。」
なんてんで、垣根の上からのぞいておりまして。
おかみさん「ほら、おまえさん、またいだから、ご覧なね。」
八五郎「へへへ、そうかい、なんだい、お前のあすこってのは、熊公の顔にそっくりじゃあねぇか。」


君子危うきに

昔、中国に君子と言う偉い先生がおりました、するとここに一人の悪女がおりまして、どうもあの君子ってぇやつは、勉強ばっかりして、いけすかないやつだ、あたしがひとつあの男をたぶらかしてやろう、なんてんで、ある晩、君子が勉強している部屋へ入りますと、君子の見ている目の前で、生まれたままの姿になりまして、そのままあお向けに寝転ぶと、大きく脚を広げて、君子に向かって、たった一言。
悪女「毛(義)を見てせざるは勇なきなり。」
すると君子が。
君子「うーん、君子あお向け(危うき)に近寄らず。」


兄弟

兄弟で、他の兄弟はみんな、器量もいいし、頭もいいんですが、上から三番目の子供だけは、どういう訳か、他の兄弟と違いまして、顔も悪いし、頭も良くない、あいつはどうも自分の子供じゃないんじゃないかと、つねづね疑っておりました亭主、奥様が病の床に伏せまして、余命いくばくもない、奥様の枕元まで参りまして。
亭主「なあ、お前、今となってはもう俺は怒らないから、頼むから本当の事を言ってくれ、他の兄弟はみんな、器量もいいし、頭もいいのに、上から三番目のあいつだけは、他の兄弟と違って、顔も悪いし、頭も良くない、あいつは俺の子供じゃないんじゃないか。」
すると病床の奥様、にっこり笑って。
女房「あなた、安心をしてくださいな、あの子だけは、本当にあなたの子ですよ。」


股火鉢

ある所に、たいへん鼻の利く男がございまして、お座敷にいましても、料理場で料理しているものが分かるってんで、仲間が大勢で、料理屋へ招待しまして、次に出てくる料理を全部当てれば、料理はおごる、一つでも違えば、全員の分を払って貰う、と言う事になりまして。
仲間「さあ、最初に出てくる料理はなんだい。」
鼻利「くんくん、ははあ、前菜は、茄子の漬物ですね。」
ってぇと、茄子の漬物が出てくる。
仲間「じゃ次はなんだい。」
鼻利「くんくん、ははぁ、こんどは、焼き魚、さんまの塩焼きですな。」
ってぇと、さんまの塩焼きが出てくる、次はおふのお吸い物、次は蛸の酢の物、次は、次は、ってんで、出るもの出るもの次々に当てる。
仲間「じゃ次はなんだい。」
鼻利「くんくん、ははぁ、次は、ああ、焼きはまぐりですな。」
ってえと、お刺身が出てまいりまして。
仲間「おや、はずれた様だね、じゃ、この料理代みんなの分も、お前さんが払うんだよ。」
鼻利「おかしいな、たしかに焼きはまぐりの匂いがするんだが、ちょっと調べさせてくださいよ。」
なんてんで、この男が料理場へ行ってみますってぇと、女中が股火鉢。


御用聞き

いつものとおり旦那さんは会社へ出かけまして、ところが途中で忘れ物をした事に気が付きまして、うちへ戻ってまいりまして、勝手知ったる自分のうちですから、ガチャっと玄関を開けまして、うちへ入ります、台所へ参りますと、奥さんが向こう向きで、お料理をしております、旦那さんは、後ろからそーっと近付きますと、奥様のうなじに、そっとキスをいたしまして、すると奥さん、振り返らずに。
奥さん「あらぁ、今日はお味噌とお醤油、もって来て。」




戦争時の事でございます、ある男が歩いておりますと、そばに爆弾が落ちまして、その男、口を吹き飛ばされてしまいました、こりゃ困った、口が無ければ、しゃべる事も、ものを食べる事もできないよ、なんて思っていますと、そばに今の爆弾で吹き飛ばされて、お亡くなりになった女性が、あそこもあらわな形で、横たわっておりまして、ああ、ちょうどいいや、この女の人のあそこを口の代りに付けちまおう、なんてんで、女の人のあそこを口の代りにいたしまして、ううん、こりゃいいや、ちょっと髭が伸びるのが早いけど、なんてんで、ある時、友達がその男に聞きまして。
男弐「なんだい、お前、女の人のあそこを口の代りに付けたって、具合はどうだい。」
男壱「ううん、どうも立ちしょんべんすると、自分のあそこをくわえたくなるんだ。」
男弐「自分のあそこを。」
男壱「ああ、おまけに月一回、口から血が出てくるんだ。」

別バージョン
戦争時の事でございます、ある男が歩いておりますと、そばに爆弾が落ちまして、その男、口を吹き飛ばされてしまいました、こりゃ困った、口が無ければ、しゃべる事も、ものを食べる事もできないよ、なんて思っていますと、そばに今の爆弾で吹き飛ばされて、お亡くなりになった女性が、あそこもあらわな形で、横たわっておりまして、ああ、ちょうどいいや、この女の人のあそこを口の代りに付けちまおう、なんてんで、女の人のあそこを口の代りにいたしまして、ううん、こりゃいいや、ちょっと髭が伸びるのが早いけど、なんてんで、ところが、翌朝になりますと、男は、背骨を折って死んでおりました。

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