艶笑小噺集



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好き者の夫婦

昔は、男女七歳にして席を同じゅうせず、なんてんで、今のように男と女が肩を並べて歩くなんてことはありませんでしたが、そんな中で、お祭りの時だけは、男と女が並んで歩けたんだそうでございますが、なかには助平なやつもおりまして、女と肩を並べて歩くくらいじゃつまらない、なんてんで、その上の事を望みまして、そういうやつは、縁日なんかが出ている明るい所ってのは避けて、神社の裏境内の薄暗がりの中で、なんかないかと歩いていますと、向こうに女の人影が写ります、男が女にそっと近付くと、女も男にそっと近付きます、男が女の手をそっと握ると、女も男の手をそっと握り返す、こりゃもう間違い無いなんてんで、そばの草むらかなんかで、こう子孫繁栄のために励んでおりますと、やはり神社の境内で変な事されちゃいけないてんで、お侍さんが提灯を提げて見回りにやってまいりまして、草むらの中でなんかやってる二人を見つけまして、提灯を差し出しまして。
侍「これこれ、なんであるかその方どもは、かような所でその様な事をいたして、不届きであるぞ。」
男「いえ、あの、その私たちは別に怪しい者ではございませんで、私たちは、ふ、ふ、ふ、夫婦でございまして。」
侍「たわけた事を申せ、夫婦なら、そのようなことは、自分のうちでいたすがよかろう。」
男「いえ、それがお役人様、私どもも、お役人様の提灯で照らされるまでは、夫婦とは気が付きませんでした。」


左馬

昔は、亭主の浮気防止に、男の一物に、左馬を書いたりいたしまして、これだと、浮気をすると字が消えてしまうので、わかるってんですが、それでも男の浮気癖ってのは、おさまりません、品川へ行ったついでに、浮気をして来た男、もう一度、一物に馬の字を書きまして、なにくわぬ顔でうちへ帰ってきまして。
女房「お前さん、品川で浮気なんかしてこなかっただろうね。」
亭主「浮気なんかする訳はねぇ。」
女房「じゃ、左馬を見せてごらん、あら、おかしいねぇ、うちにいる時は、左を向いていた馬が、右を向いてるよ。」
亭主「そりゃ、品川へ行く時は、左を向いてたんだ、うちへ帰ってくる時は、右を向いてるの当たり前だろう。」
女房「そうかねぇ、それに、うちにいた時より、少し馬ってぇ字が、太っていないかい。」
亭主「太ってるかもしれねぇ、品川で豆食わせてきたから。」




ヒロシ「ねぇ、明美ちゃん、おへその中に指入れてもいーい?」
アケミ「うん、指ぐらいならいいけど、あ、だめ、ヒロシ君、そこ、おへそじゃないわ。」
ヒロシ「うん、僕も入れてるの、指じゃないんだ。」


死んだ訳

最近は、男がだらしなくなってまいりまして、成田離婚ですとか、冬彦さん現象なんて言われまして、中には結婚しても自分の奥さんが心配で、わざわざ会社の近くにマンションを借りまして、昼休みに奥さんの事が心配で、うちへ帰ってくるなんて、情けない旦那がいるそうでございまして。
旦那「ただいま。」
奥さん「あら、あなた、いやぁね、どうしたの。」
旦那「どうしたって、今、会社の昼休みで、君の事が心配で、うちへ帰ってきたんだけど、僕のいない間に、変な男を、うちに連れ込んだりしないだろうな。」
奥さん「あなた、馬鹿ねぇ、あたしは、あなたが会社に行ってから、お掃除をして、お洗濯をして、それで、これからお昼御飯を食べようと思っていたところじゃないの、変な男なんか連れ込む訳ないでしょ。」
旦那「そうか、いや、でも、どっかに変な男がいるに違いない。」
なんてんで、旦那は、押し入れを開けたり、洋服ダンスを開けたりしましたが、そりゃあ変な男なんておりませんで、ふと、自宅の12階のマンションのベランダに出て見ますと、ちょうど今そのマンションから、一人の男が、なんかこんな事しながら出ていくところで、あ、こいつが浮気の相手に違いない、なんてんで、旦那の方は頭に血がかーっと登ってしまいまして、そばの台所にありました冷蔵庫を、それこそ火事場の馬鹿力と言うやつで、わーっと持ち上げると、マンションの12階から、冷蔵庫を下の男に投げ付けまして、その男を冷蔵庫で押しつぶして、殺してしまいました、ところが、後で冷静になって考えてみれば、浮気の相手でもなんでもない、ただの通りすがりの人だったんで、旦那の方も青くなりまして、えらい事をした、取り返しのつかない事をした、じゃ、このお詫びに、ってんで、旦那もそのまま、マンションの12階から身を投げて、死んでしまいまして、で、人間、死ぬと極楽へ行くとか、地獄へ落ちるとか申しますが、その前に一度、あの世と言う所へまいりまして、ま、我々のいるこの世界では、あの世と言うんですが、あの世の方へまいりますと、この世と言うんだそうでございますが、そこにいる閻魔大王に、どうして死んだのか、また、生きている時は、どんな事をしていたのかを尋ねられまして、で、地獄へ落とされるのか、極楽へ通されるのか決められるんだそうでございまして。
閻魔大王「ああ、次の者、入れ、そこへ座れ、お前はどうしてこの世へ来た。」
男「はい、私は実に運の無い男でございまして、私は娑婆におりました頃は、セールスマンをやっておりまして、とある町中までおいりますと、ちょっと、用を足したくなりまして、ところが町中でそんな事も出来ませんで、困ったなと思っておりますと、一軒のマンションがございまして、そこの管理人さんに話をいたしますと、その管理人さんがいい人でございましてねぇ、ああ、そう言う事なら、困った時はお互い様ですから、どうぞうちのトイレをお使いなさいってんで、トイレを貸してくれまして、ええ、で、トイレを借りて、用を足して、で、管理人さんにお礼を言って、ズボンを直しながら、そのマンションを出ましたら、空から冷蔵庫が降ってきまして、私、その冷蔵庫に押しつぶされて、死んじゃったんです。」
閻魔大王「空から冷蔵庫が降ってきて、それに押しつぶされて死んだ、はぁー、運の無い男であるなぁ、ああ、良い、お前は極楽の方へ行ってゆっくり休め。」
なんてんで。
閻魔大王「ああ、次の者、入れ、そこへ座れ、お前はどうしてこの世へ来た。」
旦那「はい、私は実に罪深い男でございまして、私は自分の女房が浮気をしているのではと勘ぐりまして、あげくの果てに、なんの罪も無い方に、マンションの12階から冷蔵庫を投げ付けまして、その方を殺してしまいました、そのお詫びに、私も水から命を絶って、この世へまいった訳でございます。」
閻魔大王「あ、じゃあ、あの、今の男に、冷蔵庫投げ付けたのはお前か、罪深いやつであるなぁ、お前は地獄へ落ちろ。」
なんてんで。
閻魔大王「ああ、次の者、入れ、そこへ座れ、お前はどうしてこの世へ来た。」
間男「いや、なんだか知らないんですけれどもねぇ、冷蔵庫の中に入ってたら、死んじゃったんです。」




中学校の理科の時間、先生が。
先生「いいですか、植物と言うのは、必ず種を蒔いたから、芽が生えるのですよ。」
と言うと、クラスの女の子がはーいと、手を上げまして。
生徒「それじゃあ先生、わたしのおへその下に、種を蒔いたの、誰ですかぁ。」


女湯

節分の日には、鬼はそとなんてんで、豆を投げますが、この鬼ってぇやつは、この豆が大嫌いらしゅうございます。
鬼壱「いてて、また、豆をぶつけられちまったよ。」
鬼弐「本当だよ、この節分てのは、俺達鬼にとっては、迷惑な話だ、どっか豆をぶつけられないような逃げる場所てのはないもんかな。」
鬼参「そうだ、いい所かある、女湯だ、あそこなら女ばかりで、荒っぽいこともされねぇだろう。」
なんてんで、鬼達が女湯へ逃げ込みますと。
鬼壱「ああ、いけねぇ、ここも豆ばかりだ。」


商売物

みーちゃん「ねぇ、おはなちゃんのうち、お菓子屋さんでしょ、毎日、甘い物がいっぱい食べられて、いいわねぇ。」
おはなちゃん「ううん、おとっつぁんがね、あれは商売物だから、手を出しちゃだめだって、それよりも、おけいちゃんのおうちは、お花屋さんでしょ、毎日、綺麗な花に囲まれていいわねぇ。」
おけいちゃん「ううん、うちもやっぱりおとっつぁんがね、あれは商売物だから、手を出しちゃだめだって、それより、みーちゃんのうち、お風呂屋さんでしょ、毎 日、男の人のいろんなの見られるんじゃないの。」
みーちゃん「ううん、うちもやっぱりおとっつぁんがね、あれは商売物だから、手を出しちゃだめだって。」

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