新作小噺集



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扇風機

うちの倅が、ま、夏暑いので部屋にクーラーを付けてくれってんですが、お父さんが子 供の頃は、クーラーも扇風機もないところで育ったんだ、子供なんだから、我慢しろ、な んてんで、ごまかしておりますと、子供が粗大ゴミ置き場から、扇風機を拾ってまいりま して、その粗大ゴミ置き場のそばに、家電メーカーの倉庫があるんですけれども、つい最 近、そのメーカーが倒産しまして、ま、その倉庫に中にあった扇風機が、何かの都合で、 粗大ゴミ置き場に出されたんでしょうけれども、子供が拾ってきた扇風機をコンセントに 差しまして、スイッチを入れると、ちゃんと動くんですね、さぁ、子供は喜びまして、そ の扇風機をきれいに掃除いたしまして、自分の部屋において、使っておりますけれども、 ただ、倒産した会社の扇風機なんで、首が回らないんです。


贈り物

夏でございまして。
奥様「ああら、あなたたいへんよ、なかもとさんって方から、贈り物もらっちゃった。」
旦那「馬鹿、それは『中元』と読むんだ。」


独眼竜弁当

一時期、NHKで大河ドラマ、独眼竜正宗なんてんで、仙台の伊達正宗公がブームにな った事がございますが、そうしますと、便乗商法てんですか、すぐに駅弁で、独眼竜弁当 なんてのが売り出されたりいたします、私のうちのそばのデパートで、全国駅弁フェアな んてのが開催されました時、この独眼竜弁当なんてのを売っておりましたので、面白いか ら買ってみたんですけれども、開けてみるとなんの事はない、ただの幕の内弁当なんで、 これ、ただの幕の内弁当じゃない、どこが独眼竜弁当なのって聞いたら、食べてみて下さ いよ、御飯が固め(片目)なんです。


二発で百円

ある御婦人でございますが、よくおならが出ます、ま、これは胃腸の御病気で、仕方が ないんでございますけれども。
お母さん「僕、ちょっといらっしゃい、あのね、これからお母さん、山田さんのうちに行 くんだけど、ほら、お母さん、おならが出るでしょ、だから、お前もいっしょに行って、 出たおならは、お前のせいにして。」
子供「ええ、いやだぁーい。」
お母さん「もちろん、ただとは言わないわよ、百円、お小遣いあげるから。」
子供「え、百円、くれるの、うん、それなら、いいよ。」
なんてんで、交渉がまとまりまして、二人で出かけます、向こうのお宅につきまして、 ご無沙汰をいたしました、なんてんで頭をさげる、お腹が圧迫されますから、とたんに、 ぶーっ、なんてんで。
お母さん「まあ、なんでしょうね、この子は、人様のうちで、お行儀が悪い。」
ここは、交渉がまとまっておりますから、子供の方も。
子供「あ、お母さん、ごめんなさい、僕ね、つい、うっかり、出ちゃったの。」
なんてんで。
お母さん「本当にいけない子だよ、お気を付けなさい。」
子供をしかる、お腹に力が入りますから、もう一度、おおきいのが、ぶーっ、っと、子供が。
子供「お母さ〜ん、二発で百円じゃ、僕、やだぁー。」


猫が怨念

猫が怨念と言う話、私の友人で関西の出のやつなんですが、とにかく猫が嫌いで、猫を 見掛けると逃げ出したり、また、石を投げて追い払ったりします、私が、あんまり猫を邪 険に扱うと、猫に祟られるぞ、なんて言っても、取り合いませんで、ある日、私のうちへ 遊びに来ていた彼が、帰るから、と言って表へ出て、ものの二・三分で、真っ青な顔をし て私のうちへ飛び込んでまいりまして、ね、猫がー!、私が猫がどうした?、っと尋ねる と、猫がおんねん。


板チョコ

男壱「わーい、バレンタインに、女の子から、チョコもらっちゃった。」
男弐「嘘付け、お前みたいなのが、チョコもらえる訳ないだろ。」
男壱「本当にもらったんだって。」
男弐「嘘付け。」
男壱「本当だってば、この野郎。」
男弐「あ、痛チョコ。」


妖怪ばばあ

妖怪ばばぁの話、まだ私が若かった頃、夜道を歩いておりますと、畑の真ん中に一人の お婆さんが立っておりまして、回りには、電気も光もないのに、そのお婆さんだけ、ぼー っと青白く光っております、そして、歩くのではないような、まるで宙をすべるように、 すーっと私に近付いてまいりまして、何やら、私に話かけるんですね。
お婆さん「もしもし、おにいさん。」
私「ん、なにか用かい、ばはばぁ(妖怪ばばぁ)。」


冷蔵庫

奥さん「ああら、店員さん、この届けてもらった冷蔵庫、カタログと違うじゃないの。」
店員「いえ、同じですよ。」
奥さん「カタログと違うわよ。」
店員「いいえ、同じですよ。」
奥さん「違うわよ、カタログみたいに、お肉や野菜が入ってないじゃない。」
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