艶笑小噺集



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奈良の大仏

昔、奈良の大仏様が、お寺の住職たちを集めまして。
大仏「なあ、住職ども、わしも長年ここにこうして座っているのも飽きた、ついては、わしの嫁になる、新しい女の仏像を作ってもらいたいのだが。」
ところが、奈良の大仏様くらいの大きさの女の仏像なんてのは、そう簡単には出来ませんので、住職の代表が進み出まして。
住職「ええ、大仏様、それでは早速、私どもは大仏様のお嫁さんになります、新しい女の仏像をこしらえますが、それには少々時間がかかります、それまでは、わたくしどもがなりかわりまして、大仏様をお慰め申し上げましょう。」
なんてんで、全国から千人の坊さんを集めまして、この大仏様の巨大なる一物を、みんなで、こうごしごしごしごしこすったのですな、すると大仏様の方もだんだんその気になりまして、う、う、う、にょき、にょき、にょきにょき、なんてんで大仏様の巨大なる一物がこう鎌首を持ち上げる、とたんに今までこすっていた、千人の坊さんがいっぺんに宙づりになってしまいまして、これが、せんずりの言われでございます。


二番目

 店の大仕事を終わらせました権助さん、若女将に呼ばれまして。
若女将「今日は、本当にご苦労だったねぇ、褒美になんでも好きなものをあげるから、遠慮なく言ってごらん、お前の一番好きなものは、なんだい。」
ってぇと、権助さん、恥ずかしそうに。
権助「へぇ、二番目は酒でごぜぇます。」


猫かぶり

男「おいこら、この野郎、お前は自分は処女だぁ、処女だぁって、猫かぶってたな。」
女「何言ってんの、あんただって、皮かぶってたじゃないの。」


馬かと思った

 ある夜、一人の侍が夜道を歩いておりますと、道端に女の影がございます、こんな夜遅く怪しいやつ、と近付きますと別に逃げる気配もありません、それでは、ってんで、そばの草むらへ連れ込んで、いたしてしまいまして。
侍「こんな夜道に女一人でおるなんて、拙者、てっきり、狐か狸かと思ったぞ。」
女「あたしゃ、てっきり馬かと思った。」


白赤黒

男壱「最初は、黒くて、やがて赤くなって、最後は白くなるものなんだ。」
男弐「さあ、わからない。」
男壱「炭だよ、じゃ、最初白くて、やがて赤くなって、最後は黒くなるものなんだ。」
男弐「さあ、わからない。」
男壱「あそこだよ。」


半開

男壱「おおい、この神社の境内で、二分は一貝、一分は半貝でございます、なんてって、膏薬を売っていた親娘がいたろう。」
男弐「ああ。」
男壱「この頃、姿が見えないと思っていたら、昨日この境内の裏の井戸で、娘の方が、すっぱだかで、水ごりをしているんだよ、俺に気が付いて、あわてて両手で大事なところを隠したんだがな、水ごりの訳を聞いてみると、親父が病気なんだってよ、そうかい気の毒にってんで、俺が二分銀を恵んでやると、ありがとうございます、なんてんで、両手で押し頂いたから、もう、大事なところが丸見えでなぁ、いい事しちゃったよ。」
男弐「へぇ、そうかい、俺もやってみよう。」
なんてんで、男が神社の裏へ参りますと、はたして娘が水ごりをしております、男に気が付くと、あわてて両手で大事なところを隠しましたが、男が水ごりの訳を聞くと、親父が病気だと言う、それじゃあ気の毒だからってんで、一分銀を差し出すと、ありがとうございます、と、片手で押し頂いたのでよく見えなかった、とくだんの男。
男弐「おい、昨日は両手で押し頂いたってのに、今日は片手か。」
娘「一分は半開でございます。」


秘書壱

 社内で、社長と部長のどちらが重いか、なんてぇ話になりまして、腹が出ているから、私の方が重い、いやいや、私の方が重い、なんてやっておりますと、そばにいた秘書が。
秘書「社長さんの方が、重たいですわ。」


秘書弐

 社内で、美人の秘書が入ってまいりまして、社内きってのプレイボーイが二人で、彼女は処女かどうか一万円賭をいたしまして。
男壱「ほら、一万円だ、君の言うとおり、彼女は処女じゃなかったよ。」
男弐「いや、この一万円にプラス一万円して君のもんだ、彼女は処女だったからね。」


物覚えの良い子供

 ある所に大変物覚えの良い子供がおりまして、なにしろ、自分が産まれる前の事まで覚えていると言う。
大人「僕は、まだ、生まれる前の事まで覚えてるんだって。」
子供「そうだよ。」
大人「へぇ、じゃ、おっかさんのお腹の中は、どんなだったい。」
子供「そうだね、まるで、秋の様だったよ。」
大人「へぇ、秋ねぇ、気候が温暖なら、春でもよさそうなんだけど、どうして、秋の様なんだい。」
子供「うん、ときどき下から松茸が生えてきた。」
大人「へぇ、よくそんな事を覚えているもんだ。」
子供「そればかりじゃないよ、あたいがまだ、おとっつぁんの方にいる時、おとっつぁんが、あたいをおっかさんの方へやろうか、女中のお清の方へやろうか、迷っていた事も覚えてる。」


無罪

 昔のお話でございまして、お城のお姫様が、お駕籠で城下をお通りになりました折、道端で、土下座をしておりました若い町人。
男一「へぇ、やっぱりお城のお姫様ってのは、いい女じゃねぇか、俺ぁ一度でいいから、あんな女と寝てみてぇもんだ。」
男二「そうかい、でも、ああいう女ってのは、あそこが臭いって事を聞いたぜ。」
 なんて喋っているのを、お付きの共侍に聞かれてしまいまして。
侍「これ、姫様のあそこが臭いとは何事だ、無礼者、お城へ来い。」
 なんてんで、引っ立てられてしまいまして、お城の中庭へ。
姫様「これ、どうしたのじゃ。」
侍「はは、恐れながら、この者どもは、姫様のあそこが臭い、などと不埒な事を申しまして。」
姫様「何、わらわのあそこが臭いとな、ええい、無礼なやつらじゃ、その者どもは、市中引き回しの上、打ち首に致せ。」
 なんてんで、二人は引き立てられてまいります、と、何を思いましたかお姫様、引き立てられる二人の背中を見ながら、自分のまたぐらへ手を入れますと、その臭いを嗅ぎまして。
姫様「ああ、待て待て、その者どもは、無罪にしてつかわせ。」


夜の公園

夜の公園で、男と女の会話。
男「キスしていいかい?」
女「またにして。」

夜の公園で、男と女の会話。
女「キスしていーい?」
男「たまにならいいよ。」


由良之助

 塩谷判官が切腹をいたしまして、奥様はさぞさびしかろうと、由良之助が、張り形を送りましたが、どうもお気に召さないようで、由良之助が奥様のところへ呼び出されまして。
由良之助「由良之助、ただいま到着。」
奥様「おお、細かりし、由良之助。」


雷の重箱

 ある男が歩いておりますと、突然の稲光、がらがらがらがらってんで光ったかと思うと、
空からなんか落ちてまいりまして。
男「おや、なんか落ちてきたよ、おやおやおや、これは重箱だ、雷が鳴る、途端に落ちてくるなんて、こりゃ雷様の重箱かな、中には何が入ってんだろう。」
ってんで、上の段を開けてみますと、おへその佃煮が入っております。
男「へぇ、おへその佃煮、なるほど、昔っから、雷様はおへそを取るってぇけど、こうして佃煮にして食べてたのか、じゃあ、この下の段には何が入っているんだろう。」
ってんで、男が重箱の下をのぞこうとすると、雷様が雲の間から顔を出して。
雷様「おい、へその下ぁ見ちゃあいけねぇ。」


立ってるものは

 近ごろは、人生相談なんてのがございまして。
先生「はい、次の方どうしました。」
相談者「実は、私の義理の父なんですけれども、夫が留守の間に、私の体を求めて来るんですけれども、どうすれば良いのでしょうか。」
先生「ああ、それなら、どんどんやっておしまいなさい、昔から諺にもあるでしょう、立ってるものは親をも使え。」


お歯黒の粉薬

 昔のご婦人は結婚いたしますと、お歯黒と言って、歯を黒く染めたんだそうでございます。お歯黒、正しくは鉄漿(かね)と申しまして、カネをつけると言ったんだそうでございまして、色があせることを、カネが落ちると申しましていやがります。カネが落ちないようにするには、カネに煙草の灰を混ぜると良いとか、砂糖を混ぜると良いとか、あるいは、カネが落ちないなんてぇふれこみのいろいろな粉薬なども売っていたんだそうでございまして、あるお屋敷の奥女中。
奥女中「この頃、お歯黒の色が落ちてこまる。誰かカネが落ちない粉(こな)を買ってまいれ。」
奥役人「かしこまりました。」
 なんてんで引き受けた奥役人、ところがこの奥役人、近頃お国表から出てきたばかりで、お国なまりがある、江戸っ子ってぇのは「それは、いけない。」、「出来ない相談だ。」、「少しも、落ちない。」と発音します、少し乱暴な口調なら、「いけねぇ。」、「出来ねぇ。」、「落ちねぇ。」となります、けして「いかん。」、「出来ん。」、「落ちん。」とは言いませんが、この奥役人、「いかん。」、「出来ん。」、「落ちん。」のお国柄だったらしく、おまけに、この奥役人、きな粉や、さらし粉、ふくらし粉のように、粉(こな)の事を何々粉(こ)と発音する癖があったからたまりません。
奥役人「これ、誰かおらんか。」
使い「ははぁ。」
奥役人「急いで、カネの落ちん粉(こ)を買ってまいれぇ。」
 なんてんで、使いの男が買って来たのが、金の張り型。

(張り型=江戸の大人のおもちゃ、現代の電動コケシ?) inserted by FC2 system